アーユルヴェーダ薬膳ライフ41/ 砂漠の商人

9月になりました。今年の中秋の名月は9月10日だそうです。中秋と聞くだけで涼が蘇り、耳に響くのは蝉から鈴虫へ。この蒸し暑さももう少しの辛抱と勇気が湧いてきます。月で思い浮かぶのは何といっても砂漠とラクダ。と思うのは私だけかなぁ。(#^.^#)

インド旅行の楽しみの一つは買い物ですが「ぼったくられた」という体験談をよく聞きます。1500ルピー払ったのに、他の人は500ルピーで買っていた、とか。

私もよくあります。腹が立つけど、寄付したのだとさっさと忘れることにしています。とにかく、その時は欲しかったんだから、手に入らなかったら、もっと心残りのはず。日本に戻れば失敗談も笑える思い出になります。

今回も西インドの砂漠地帯のお話し。パキスタンとの国境近いジャイサルメールは日本画家、平山郁夫さんの大作『ジャイサルメール』で有名になりました。

夜中にジョードプルから列車に乗った。4人掛け向かい合わせのレザー椅子はどの車両もガラガラ。7時間の旅。朝陽に輝く白い家並を過ぎ、厳しい陽射しの枯れた農地を通過、やがて果てしない砂漠が続くころ、窓の外は不毛地帯。熱風が強く、砂がバシバシ窓ガラスに打ち付ける。

いきなり車内が薄暗くなった。わぁーっ、こんなの始めて。停電? と窓ガラスを見入っていると「Sand storm(砂嵐だ)」男の声。気が付くと、斜め向かいの席にインド人が座っていた。ポロシャツにジーンズの30代くらい、筋肉質で小柄。

「Where are you going? (何処へ行くんだ?)」ジャイサルメールと答えると男は大喜びした。彼の実家はジャイサルメール。デリーで商談を終え1カ月ぶりに帰るところだと話した。名前をサラーム。ジャイサルメールの観光について親切に教えてくれた。彼の家はカーペットやショールなどの布製品の店。滞在中に是非来てくれと、名刺をくれた。そして次の外国人を求めて去って行った。やる事がスマート。さすがエジプトからヨーロッパまで続く東西交易で鍛えた商魂は違う。ラクダで商いを展開してきた歴史ある砂漠の商人の末裔なのだと思った。

列車は定刻より2時間遅れで昼過ぎにジャイサルメールに着いた。改札口で迎えの車とガイドに会った。遅くなったことを詫びると、列車は定刻には着かない。観光客の迎えは一日仕事なのだ、とガイドのナトシンは言った。

翌朝、ホテルのロビーに迎えに来たナトシンに昨日貰った名刺を見せた。この店に行きたい。快くO.Kしてくれた。車はしばらく走り、空き地で止まった。ここまでしか車が入らないと言う。狭い石畳の路地。入口が何処か解らない間口の狭い黄砂石の家が並ぶ。ナトシンがここだと言うので、入ると中には白い幕がテントのように張ってある。両壁には長椅子が続き、白い服を着たオジさんたちが幽霊のように並んで座っている。気味が悪い。ガイドがいなければ絶対に来ないはず。その薄暗い布のトンネルをしばらくくぐる。やがて、椅子に座っている一人が昨日会ったサラームだった。彼は立ち上がり大喜びで出迎えてくれた。

砂漠地帯の家は砂嵐や日射を避けるために間口が狭く、涼を求めて薄暗いのが普通らしい。オジさんたちは日陰ぼっこ(?)をしている親戚縁者だと話した。陳列商品はあのオジサンたちか、と私が冗談をいうと早速彼のビジネスが始まった。

店はその建物の2階と3階部分になっており、黄砂石の階段を上がった。農業が出来ない地域のため家内工業が発達している。彼の店は刺繍やビーズワーク等女性が織りなした内職品をニューデリーに卸していた。確かに日本ではこれほどの製品、いや美術品と言えるほどのファブリックはない。しかも、インドは日本の貨幣価値の10分の1なのだ。日本で買えば5000円はしそうな物も500円で手に入る。さらに、ここは小売店ではなく、製造元の卸売り。私はワクワクした。

土産なら小物が良かろうと、彼は私にイスを勧め、タンスの引き出しから10本ほどのショールを出して床に広げた。そのうち2本買った。代金をその場で支払う。彼が8本を片付ける引き出しから色鮮やかなショールがのぞく。「それ、きれいね、見せて」と言うと「これ?」と言って、さりげなく5本ほど出してくれた。私はもう1本買った。その場で支払う。彼は4本のショールを丁寧に畳みながら、別の引き出しに仕舞い始めた。その中には上等なスカーフが見える。「わぁー、スカーフもステキね」「あっ、これ?ちょっと高いよ」と言いながらシラーとした顔つきで3本ほど出して来る。私はその1本をまた買った。

あれこれ押し付ける訳ではなく、チラッと見せて客の好奇心を引く。そして、次々と高価な物へと釣り上げていく。イスに座った私の目線がちょうど引き出しの中が見える位置。うまい手だなと思った。こういう手法は始めてだ。解っていても魔法にかかったようにワクワクが止まらない(#^.^#)

ナトシンが、そろそろ行かないと、今日の予定が周れないと出発を促した。

(写真)西インドの民族衣装 ランガー

結局、あちこちでお買い物マジックに引き込まれ、スカーフやショールどころか民族衣装やアクセサリーなどもどっさり買い込み1日を終えた。ホテルのロビーでナトシンと明日の出発時間を確認して別れた。ロビーのある本館から宿泊しているコテージまで石畳みが続いている。私は、両手にいっぱい買い込んだ重たい土産袋をさげ、旅のラクダのように夜空を見上げた。椰子の葉の向こうに大きな満月がぽっかり浮いている。

夢見心地で思うのは、やっぱり砂漠の商人は違うなー。でも日本に帰ったとたん砂漠の魔法が解け、買い物全てが砂に変わっていたらどうしよう。『ぼったくられた』どころの話ではない。まぁ、それはそれで旅の笑い話になるかな。いや、そんなアラビアンナイトのような出来事があったら、そっちの方が面白い。そんな事を思い浮かべ、私は一人ゲラゲラと笑った。(#^.^#) ハハハ〜。

関西で学べるインド式健康法アーユルヴェーダ・ライフ|南想子の教室

ナマステ。インド式健康法アーユルヴェーダにようこそ。健康は正しい食事と生活習慣でつくられます。この教室ではアーユルヴェーダの健康理論を基にスパイス・瞑想・セルフエステを日常生活に取り入れた生活習慣を目標にしています。あなたの体質あったヘルシーライフスタイルを一緒に見つけましょう。

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