アーユルヴェーダ通信15 自分への手紙
コロナ緊急事態宣言解除の今日まで、医療関係の皆様はじめ、巣こもり生活を支えてくださったコミニティワーカーの皆様ありがとうございました。
そして、不幸にしてお亡くなりになった方々へ心よりご冥福をお祈りいたします。
コロナ第2波を警戒しながらも社会が慎重に動き出しています。最近テレビでよく耳にする言葉『新しい日常』『新しい生活様式』。『新しい』には出会い、リセット、ワクワク感のような未知に対する期待と変化に対する動揺、不安、焦りの両面が内在していると思います。
インドのアーユルヴェーダ病院でのエピソード
20年以上勤めた管理栄養士を退職し、夢いっぱいで渡航したインド。その生活も1年が過ぎました。クラスメイトの留学生たち3人は、卒業後の新しい生活設計をしっかり持っていました。
アレクは病院のパソコンでアーユルヴェーダ病院の求人を見つけ、看護士として働くためにイギリスに帰っていきました。アメリカ人のマリアはもともとニユーヨークでヨガ教室を経営しており、レベルアップした教室運営に意欲を燃やしていました。ベロニクは瞑想療法をさらに深く学びたいとチベットに向かいました。それぞれに新しい夢を引っ提げて去っていきました。
さて、私はと言うと…。
「本当に、これから日本に戻ってやっていけるのかなぁ…。」と不安だけ。
イギリスやドイツと違い、アーユルヴェーダを医学と認めていない日本。習得した看護士の国際ライセンスは日本では通用せず、単なるセラピスト。それは特に資格や経験はなくとも名刺に『アーユルヴェーダセラピスト』と印刷すれば誰でも名乗れるものでした。ひょっとしたら、帰国後は再就職を目指してハローワーク通いの毎日に…。
卒業後の進路も決まらぬまま寄宿舎を出るはめになり、私は日本に宛て小包3個を送りました。そして、手紙を一通。小包に一緒に入れておけば良かったものの後で思いたったので、その手紙は小包発送の翌日になってしました。
インドのスローライフスタイルがすっかり気に入っていた私は、帰国後待っている新生活になかなか踏み出す気になりませんでした。
寄宿舎を出てもしばらくは、インド人の友人を訪ねたり観光地を周ったり、スケッチブックを片手にぶらぶらしていました。やがて所持金も残り少なくなり、帰国後に油絵の初個展をするつもりでギャラリーも予約してあったので、その準備も気になり始めました。やむなく日本に戻ることにしました。
送った2個の小包は帰国後3週間ほどで着きました。1個はひと月後に。しかし自分宛ての手紙は届きませんでした。ひと月が過ぎ、ふた月が過ぎても。インドではよくある事で、これまで日本から送った手紙がインドに届かなかったことが度々ありました。郵便物が紛失することがあるようです。
インド留学で学んだアーユルヴェーダの知識で起業するつもりでいましたので、個展のギャラリーにはセミナーのチラシも置きPRしたい。そうするとセミナー会場の手配やカリキュラムの編成。講義資料の準備等々で相当に忙しい毎日になってしまい、手紙の事はいつしか忘れてしまいました。
初めての油絵個展『スケッチしながら印度一人旅』は大阪ユネスコ協会様の後援もあり、予想外に大勢の皆さんが来て下さいました。連日お祝いに来てくれた方々にお礼と描いた絵のエピソード、留学中の話。その一方で、女性起業家を後押しするセミナーや勉強会や交流会があり、私は個展の開催中も受け付けをカラにしたり、お祝いに来た友人に頼んだりして参加していました。
そんなわけで毎日忙しく、インドで過ごしたスローライフの反動が親の仇のように襲ってきました。クタクタになって寝るだけの毎日。念願の初個展だというのに疲労困憊して、ただひたすらしんどい。こんなはずでは…。((+_+))
やがて個展最終日の前夜。ギャラリーの照明を消し、CLOSEの看板をドアに掛けて鍵をかける。明日で終わる。ほっとしている自分が情けない。
ギャラリーから戻り、しばらく見ることもなかったポストを開けると、インドからの手紙が入っていました。
「えっ!」それは懐かしい懐かしい自分のへたな文字。二ヶ月半かけて届いたのでした。もう、何を書いたのか思い出せないくらい遠い過去からの手紙でした。
新しい南想子さんへ
こんにちは。私を覚えていますか。
日本に帰ったとたん、日常が慌ただしく始まってしまい、
今「あっ!」と私を思い出した事でしょう。
あなたが、インドを出る時に誓った事、忘れないように
ここに記しておきます。
自分の夢に怖気づくな。
インドにいた過去の南より
『過去の私』が送った『未来の私』への手紙。そうだあの時、自分にエールを贈るつもりでこんな事を書いたのだ…。漠然とした不安とまた一から始めなければならない面倒くささ。重い腰はなかなか上がらず現実逃避していた私。今懐かしいと思えるのは自分があの頃より、少しは成長したと考えて良いのだろうか? と思いました。
お陰さまで、起業家育成セミナーで知り合った多くの方々や各新聞社、公的機関の皆様のご支援をいただき『夢追い南』は6年たった今日も元気です。(^◇^)
長い日数をかけて届いた手紙は、サリーを収納する衣装ケースの中。セミナーで着る衣装を選ぶときに目にします。その度に「ここまで来てくれてありがとう。大丈夫。何とかやっていますよ」と話しかけると、色鮮やかなサリーから、香の良いかおりが漂ってきます。
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